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君が目覚めるまではそばにいさせて
君が目覚めるまではそばにいさせて
مؤلف: 結城 芙由奈

1-1 祖父の死

last update تاريخ النشر: 2025-03-28 15:36:19

君の明るい笑顔を見るのが大好きだった

だけど、人一倍寂しがりやだったね

辛い時、悲しい時は我慢しないで泣いてもいいんだよ

君が目覚めるまでは側にいるから――

****

 桜の木々に囲まれた葬儀場に参列者達が集まっていた。

「家の中で倒れている所をお隣の川合さんが発見されたそうよ」

「他にご家族はいないの?」

「それが千尋ちゃんがまだ小学生だった頃に両親が交通事故で亡くなったから、幸男さんが娘の子供を引き取ったのよ」

「父方のご両親は何故ここに来ていないんだろう?」

「千尋ちゃんのご両親の結婚に猛反対だったらしくて絶縁状態だったのよ。でもさすがに自分の息子のお葬式には来たけれど、幸男さんと大喧嘩になって大変だったみたいね」

「千尋ちゃんも成人して働いているから先方も幸男さんの葬式に来ないのかもな……」

葬儀場で近所の人々が会話をしている。青山千尋は、椅子に座って窓から見える美しく咲いた桜の木々を眺めながらぼんやりと聞いていた。

昨夜のお通夜には千尋の友人達も大勢駆けつけてきてくれたが、平日の告別式となると彼等の参加は難しい。結局千尋から告別式には顔を出さなくても大丈夫だからと断ったのである。人が少ない会場での会話は全て千尋に筒抜けとなっていた。

(そっか……だから向こうのお爺ちゃんやお祖母ちゃんに一度も会った事が無かったんだ……)

千尋の両親が事故で亡くなったのは、彼女が小学生の時。修学旅行に行っていた最中の出来事だった。両親の死で独りぼっちになってしまった千尋を引き取ってくれたのが祖父の幸男である。千尋は突然の両親の死を受け入れることが出来ず、二人の葬式にもショックで参列出来なかった。

千尋は祖父の遺影を見つめた。そこには笑顔でカメラに写っている祖父の姿があった。専門学校を卒業したお祝いの席で千尋が撮影したものであった。

『上手に撮れたなあ。よし、爺ちゃんの葬式の時はこの写真を使ってくれよ』

生前の祖父の言葉が頭をよぎった。あの時は、そんな縁起でもないことを言わないでと祖父に怒って言った。だが、たったの1年で現実の出来事になるとは思ってもいなかった。

堪えていた涙が出そうになり、千尋はぐっと両手を握りしめたそのとき。

「千尋ちゃん」

聞きなれた声で呼びかけられ、千尋は振り向いた。

「川合さん」

声の主は祖父が家の中で倒れているのを発見し、救急車を呼んでくれた近所の主婦だった。

「その節は大変お世話になりました。バタバタしていて御挨拶にも伺えずにすみませんでした」

千尋は慌てて席を立ち、深々と頭を下げた。

「いいのよ、そんなこと全く気にしないで! 突然お爺さんを亡くされた上に、葬儀の手配まで全て一人でやったんでしょう? それより大丈夫? すごく顔色が悪いわよ? 食欲が無いかもしれないけど、こんな時だからかこそちゃんと食べなくちゃ」

そう言うと女性は千尋におにぎりとお茶を乗せたお盆を手渡した。

「あ、あの……これは?」

「まだ式が始まるまで時間があるから、ちゃんと食べるのよ」

「ありがとうございます」

千尋は頭を下げた。

いいのよと女性は手を振りその場を後にした。恐らく自分がいては千尋が食べにくいと思い、気を利かせたのだろう。

「いただきます」

千尋は小さく呟くと自分の隣の空いてる席にお盆を置いておにぎりを口に運んだ——

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  • 君が目覚めるまではそばにいさせて   間宮渚 15 君が目覚めるまでは側にいさせて 4 <完>

    「……!」千尋は恐怖で声が出ず、腰が抜けたようにその場にへたり込んでしまった。「お前が憎い……。お前のせいで俺はこんな身体になってしまった。殺してやる!」長井は刃物を振りかざし、千尋に振り下ろそうとしたその時。「千尋ーっ!!」渚が玄関から飛び込んで来ると長井の頬を思い切り拳で殴りつけた。「!!」勢いあまって車椅子から転がり落ちる長井。「く、くそ!」長井は床を這い、刃物を取ろうとしたところを渚は刃物を蹴り飛ばし、長井に馬乗りになると胸倉を掴んだ。「貴様! まだ千尋を狙っていたのか!? 絶対に千尋には手出しをさせないぞ!」さらに数回殴りつけると、長井はぐったりと気を失ってしまった。渚は荒い息を吐きながら台所から粘着テープを持ってくると長井の両手を後ろ手に縛りあげた。「……な、渚……君……? どうして……?」震えながら見守っていた千尋の眼に涙が浮かぶ。「千尋! 無事でよかった!」渚は千尋を強く抱きしめた。「う、うん…」千尋は何とか返事をすると、渚は慌てて離れた。「あ……い、一体、俺は今なにを……?」渚は自分の行動が信じられず、両手を見つめた。「渚君……もしかして記憶、戻ったの……?」千尋は恐る恐る尋ねた。「自分でもよく分からない……ただはっきり言えるのは、まだ俺の中にはあいつが残っている。いや……あれは残像なのかもしれない」「残像……?」「ああ、多分な。でも少しはお前のこと、思い出したぜ。俺達、この家で一緒に暮らしてたんだよな?」「うん……。私もまだあまり記憶が戻っていないけど、渚君と私はここで生活していた。渚君の中には、ヤマトがまだいるんだよね?」千尋の眼に涙が浮かぶ。「そうか……あいつ、ヤマトって名前だったのか。今初めて知ったよ」そして渚は足元に転がっている長井を見下ろした。「とりあえず、こいつを警察に通報するか?」**** そこから先は大騒ぎとなった。長井は警察に再び連行され、里中は長井と一緒にパトカーに乗り、ずっと説教をした。連絡を受けた祐樹は、何故渚がここにいるのか、もしかすると記憶が戻ったのかとしつこく問い詰めたのだった……。「渚、お前やっぱり千尋のことを思い出して、また好きになったんじゃないのか?」千尋の家からの帰り道、祐樹は渚に尋ねた。「さあな? 正直な所……俺にもよく分からない。

  • 君が目覚めるまではそばにいさせて   間宮渚 14 君が目覚めるまでは側にいさせて 2

    『ええ、それで長井の記憶が戻った後に一度だけ事情徴収をしたことがあったらしいです。青山さんの自宅に侵入後、大きな犬に追いかけられて逃げまどっているうちに歩道橋の下に落下してあのような身体になってしまったようですね』「……ヤマトだ。きっとその犬は青山さんが飼っていたヤマトで間違いないです」『なるほど……。それでか……』警部補は何か引っかかる言い方をした。『? どうかしたんですか?』『いや……これは長井の母親から聞いた話ですが、どうも長井は青山さんを酷く憎んでいるらしく、殺してやると言ってるのを聞いてるんですよ。まあ今となって車椅子生活なので、長井の行動も制限されるとは思いますが、念の為に報告させていただきました。でも青山さんには話していないんですよ。煽るようなことを言って不安にさせてもいけないと思いまして』 電話が終わり、里中は通話を切った。色々な出来事があって長井のことをすっかり忘れていたのだ。(まさか今頃になってまた長井の名前が浮上してくるなんて……)部屋の時計を見ると朝の9時半を指している。「取り合えず10時になったら花屋に電話を入れてみるか」里中はぽつりと呟いた――****   今朝も渚は朝から眠っていた。夢の中はいつも同じ光景。真っ暗闇の世界に相変わらず男がいる。ただ今日だけは違っていた。いつもは座っているはずなのに何故か渚が近づいてくると立ち上がり、振り向いたのである。「お? 何だ? お前、珍しいことするな。驚くじゃないか。って言うかお前動けたんだな?」その時、能面のような男の口元から言葉が漏れた。「……すけて」「え? 何だって? お前今しゃべったのか?」「……を助けて……」そして千尋を指さした。「え? あの女を助けろって言うのか? 一体何から助けるんだ?」男はある一点を指さした。「?」渚が訝しんでいるとポワッとその部分が明るくなり、車椅子に乗った若い男が映し出された。その目はギラギラ光り、鋭い殺気を纏わりつかせている。電車に乗り、何処かに向かっているようだった。ゾワリ。その瞬間、渚の中で血がたぎるのを感じた。そうだ、思い出したアイツは、あの男は――<千尋を助けてあげて……>頭の中で声がする。ああ、分かってる。何があっても俺はお前を守って見せる……!「千尋!!」渚は自分の叫び声で目が覚めた

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  • 君が目覚めるまではそばにいさせて   間宮渚 12 想い 3

    渚が祐樹の部屋に居候するようになってから、千尋は祐樹と仕事帰りの短い時間に時々会うようになっていた。「どう? あれから渚のこと何か思い出した?」隣を並んで歩きながら祐樹は聞いてくる。「それが……まだあまり思い出せなくて」「そっか。まあ焦ることは無いと思うけどな。ところで千尋。俺、仕事まで2時間くらい空いてるんだ。これから飯食いに行くつもりなんだけど一緒に行かないか?いつの間にか祐樹から千尋と呼ばれるようになっていた。一人で家に帰って食事するのも寂しいし、何より気さくな態度で接してくれる祐樹の隣は居心地が良かった。「うん、それじゃ行こうかな?」「よし。決まりだな。実はこの先に新しくパスタの店がオープンしたんだ。前から行ってみたいって思ってたんだけど、どうも男一人じゃ入りにくくて。千尋が一緒に来てくれて良かったよ」「そうなんだね」頷きながら、千尋は疑視感を覚えた。(あ……そう言えば以前もこんな風に誰かと一緒に歩いたことがあるような……)千尋は足を止めた。「ん? どうしたんだ?」ついてこない千尋を振り返り、祐樹は足を止めた。「うううん、何でもない」千尋は慌てて祐樹の背中を追った――****「あ~美味かったな」店を出た祐樹の顔には満足気な笑みが浮かんでいる。「うん、美味しかったね」「悪いな、送ってやれなくて。これから塾のバイトだから」「そんなこと気にしてるの? 私に構わず早くバイトに行って。遅れたら大変でしょ」「ああ、それじゃあな」祐樹は手を振った。「うん、それじゃあね」千尋は背を向けて歩き出そうとしたその時、突然祐樹に右手を強く引かれた。「え?」振り向くと祐樹が真剣な目で千尋を見つめている。「あ、あのさ……」「びっくりした……どうしたの?」「俺達、付き合わないか?」「え?」千尋は突然の話に目を見開いた――**** 22時半――祐樹が仕事から帰ってきた。「おい、祐樹。どういうことだよ? お前そのまま仕事に行って来たのか? なら連絡位寄こせよ。こっちは飯作って待ってたんだからな」渚がスマホをソファに放り投げて文句を言った。「ああ、悪かったな。連絡しなくて。飯、外で食って来たんだ」「だったらちゃんと連絡しろよ」「分かった、今度からそうするよ」祐樹はドカッとソファに座り、そのまま黙ってしまった。

  • 君が目覚めるまではそばにいさせて   間宮渚 11 想い 2

    「ああ。ヤマトは去年の11月頃……だったか? 当時千尋さんは俺の知り合いにストーカー行為をされていて、その犯人を追い払ったのがヤマトだったんだ。けれどあの日以来行方不明になってるって聞かされていたけど……」「おいおい、まさかその犬が渚の身体を一時的に乗っ取ってたって言うつもりか? もし仮にそれが事実だとすると、あいつ発狂するかもな~。大嫌いな犬に自分の身体が操られていたなんて知った日には」「で? 千尋さんも俺と同様、その男の記憶が全く無いってことなのか……」「最初は嘘でもついているかの思ったけど、そうでも無さそうだな。お前ともう一人の渚はすごく親しい仲に見えたぞ。少なくとも俺にとっては」「そっか……」里中は少しだけ寂しげに笑った。「もう1杯、カクテル作ってくれるか?」「うん? 何が欲しい?」「お前に任せるよ。……そうだな。今はいないアイツの為にぴったりなの頼む」「……」それを聞いた祐樹は少しだけ考え込んでいたが、やがて慣れた手つきで里中の前でカクテルを作り終えると、テーブルに置いた。「これは?」「ギムレット。ある小説の中に出て来るカクテル……。長い別れを意味するカクテルだ」「そっか……」「俺はお前ともう一人の渚に、二人で一緒に店に飲みに来いって誘ってたのさ。でも二度とそんな日は来ないけどな」「それじゃ今はいなくなった『ヤマト』に乾杯するか」「ああ、それがいいかもしれない」里中はグラスを掲げた。「乾杯」 ****  何故か、あの日以来渚の生活は昼夜が逆転してしまった。 夜は全く眠れなくなり、明ける頃に眠りに着く—―そして決まって夢を見るのだ。そこはいつも同じ場所。見知らぬ男が暗闇の中に座り込み、千尋の姿を見つめている。自分の夢の中だと言うのに、思うように行動出来ない渚は仕方が無いので一緒に千尋の様子を見つめている。夢の中で見る千尋は何なのだろう? 花屋で働いている姿や食事をしている姿……。この夢を見るようになって、自分が見ている千尋は今実際に行動している姿に違いないと思うようになっていた。毎日千尋の姿を見るようになり、徐々に渚の心にも変化が見られてきた。「あ~あ。今日は余程眠いのか? 何回欠伸してるんだよ。あ、馬鹿馬鹿。今そこに鋏置いたの忘れたのか?」渚はクスクス笑いながら千尋の様子を見ている。その時、ふと渚

  • 君が目覚めるまではそばにいさせて   間宮渚 10 想い 1

     ――金曜20時 里中は祐樹がバイトをしているショットバーに来ていた。「ほらよ」 祐樹は里中の前にカクテルグラスを置いた。「やっぱり男なら最初に飲むカクテルはこれだろう?」バーテン姿の祐樹は得意げに里中に言う。ワインを思わせるような赤い色のカクテルにはチェリーが沈められている。「これは……マンハッタンか?」里中はカクテルグラスを傾けた。「まあな、これは俺の奢りだ。でも2杯目からは料金取るからな?」「分かってるよ」里中は苦笑するとグラスを口に運んだ。甘みのある香りが鼻腔を擽る。「旨いな……それで、俺に話って何だ?」「お前……さ、彼女とは会ってるのか?」祐樹の顔は真剣だった。「彼女? 彼女って誰だ?」「青山千尋だよ」「千尋さんか? 別に会うって言っても週に一度、病院に生け込みに来る日だけだぜ? 最後に会ったのも1週間前だ。って言うか、何でお前が千尋さんを知ってるんだよ」「何か彼女から聞いてるか?」しかし祐樹はそれには答えず質問をする。「いや……。聞くって何を? って言うか、先に質問してるのはこの俺なんだけど?」「そっか。何も聞いていないのか」祐樹は呟いた。「おい! 無視かよ!」すると祐樹は黙って里中にスマホを見せた。それは渚の写真だった。「この男のこと、知ってるか?」「……?」里中は穴が空くほど真剣に写真を見つめ……首を捻った。「いや、知らない男だ。この男がどうかしたのか?」祐樹は一瞬驚いたような表情を見せた。「そうか……知らない男か……」「お前が何言ってるかさっぱり分からないんだけど?」「それなら逆にこっちから尋ねるぞ。どうして俺とお前は知り合いなんだ?」祐樹は真剣な眼差しで里中を見る。「ど、どうしてって……。それはお前、二人の共通の知り合いを通じて……? あれ? 共通の知り合いって一体誰だ?」里中は頭を抱え込んでしまった。確かに自分はその人物を知っていたはずだ。なのに何故何も思い出せないのか分からない。「やっぱり、お前もそうだったんだな」祐樹は核心を突いた言い方をする。「そうだった? どういう意味だ?」「お前がもう1杯カクテル頼んだら教えてやってもいいぜ?」祐樹は意味深に笑った――****「で、お前の幼馴染の身体を使って千尋さんや俺達と会っていた人物がいたって訳だ? だけど肝

  • 君が目覚めるまではそばにいさせて   1-5 新しい生活 2

     千尋はいつも自作のお弁当を職場に持って行くようにしていた。忙しい接客業の仕事はランチに出掛ける時間を取るのが難しい。少しでも昼休みをゆっくり過ごすには持参するのが最も良かったのだ。炊飯器の中はもうご飯が炊けている。千尋にとって朝ご飯に味噌汁は絶対欠かせない。さっそく千尋は朝食の用意に取り掛かった 千尋はいつも自作のお弁当を職場に持って行くようにしていた。忙しい接客業の仕事はランチに出掛ける時間を取るのが難しい。少しでも昼休みをゆっくり過ごすには持参するのが最も良かったのだ。炊飯器の中はもうご飯が炊けている。千尋にとって朝ご飯に味噌汁は絶対欠かせない。さっそく千尋は朝食の用意に取

  • 君が目覚めるまではそばにいさせて   1-4 新しい生活 1

    —―午前6時ピピピピ・……大きな目覚まし時計の音が鳴り響き、眠っていた千尋はゆっくり目を開けた。布団から手を伸ばし、目覚まし時計を止める。「う~ん……もう朝か……」目をこすりながら呟く。祖父の49日も無事に済み、あれから半年の月日が流れていた。千尋のベッドのすぐ側にはヤマトが気持ちよさそうに眠っている。ヤマトは祖父が亡くなってからはずっと千尋の側を片時も離れなくなっていた。(私のことが心配でたまらないのかな?)その姿を見てくすりと笑った。事実、ヤマトのお陰で祖父を亡くした寂しさを乗り越えることができたようなものである。恐らくヤマトがいなければ祖父の死から立ち直れなかったかもし

  • 君が目覚めるまではそばにいさせて   1-3 祖父の死 2

    ――その後 葬儀場の職員と49日の法要等の手続きを済ませ、千尋が家に帰ってきたのはすっかり日も暮れていた。祖父と暮らしていた家は築45年の古い木造家屋で平屋建て。全ての部屋が和室であるが、部屋数は2人で住むには十分な数があり、幸男の趣味の家庭菜園が出来る程の広い庭付きの家である。「ただいま」真っ暗になった家の玄関の鍵を開けて、中に入ると白い大きな犬が千尋に飛びついてきた。「ワン!」「ヤマト、ごめんね。すっかり帰りが遅くなって」千尋はヤマトの前にしゃがみ、頭を撫でるとヤマトは嬉しそうに尻尾を振った。「ヤマト……」そのまま黙ってヤマトの頭を撫で続けている。「キュ~ン」する

  • 君が目覚めるまではそばにいさせて   1-2 祖父の死 2

    「美味しい……」ここ数日、余りにも色々な出来事があった為、まともに食事することすら忘れていた。そもそも食欲など無かったが、差し入れのおにぎりは女性の気遣いが感じられ、今の千尋には何よりのご馳走であった。食事を終え、空いたお盆とお茶を給湯室に置きに行こうと席を立った時。「青山さん!」会場に響き渡るような大声で千尋を呼ぶ声がした。「あ……店長!?」花の専門学校を卒業した千尋は自宅周辺の最寄り駅である花屋で働いていた。そこの店長――中島百合が葬儀場に現れたのである。年齢は35歳で細見で長身、ショートカットの髪型の為か年齢以上に若く見える中々の美人。ちなみにまだ独身で、婚活中。「どうし

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